解説)農水省が農薬の補助成分の規制強化でパブコメ中。除草剤グリホサートの補助成分POEAの問題などが再注目されています。そこで2017年4月21日の週刊金曜日に書いた残留基準緩和の記事をアップデートしました。
発がん性が指摘されている除草剤グリホサートの残留基準の大幅緩和が検討されています。
2017年3月22日の厚労省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会で議論されました。今回大幅な基準緩和が提案されているのは輸入農産物に対するものです。
そもそもグリホサートについては、アメリカで1990年代にグリホサートをかけても枯れない遺伝子組み換え作物が導入されたことで使用量が大幅に増えました。それに合わせて日本の残留基準もその当時緩和されました。
今回の見直しでは、小麦・大麦、そばなど遺伝子組み換え作物ではないものについて一律に30ppmに緩和されようとしています。それはなぜか遺伝子組み換え大豆の基準(20ppm)よりも甘いものです。
その理由が欧米での独特のこの除草剤の使い方にあります。小麦などは畑の中で実の成熟の度合いがばらつきがでます。そこで一度に収穫をできるように、収穫の1~2週間前に除草剤を散布することにより実を一斉に乾燥させるためです。そうした散布法が1980年代から行われています。ちなみに日本国内ではそうした使い方は登録されていません。
その結果、外国産小麦からはグリホサートが残留するケースが多くなます。日本に輸入されるアメリカ産、カナダ産小麦に対する農水省の残留農薬検査では、毎年94~100%の割合でグリホサートが検出されています。平成28年(2016年)度調査で はアメリカ産から54件中51件、カナダ産からは36件中36件検出されました。
現在の残留基準値(5ppm)を超えるものはありませんでしたが、平成24年(2012年)度のカナダ産小麦からは基準値ぎりぎりの4.34ppmの残留も見つかっています。
ただ海外でもグリホサート残留を気にする動きも出てきており、穀物商社の間では、小麦や大麦(特にビールの原料になるモルト原料のもの)について、収穫前の散布をしていないものしか買い取らないとする動きも出てきています。日本政府もただ国際基準に合わせるだけでなく、国際基準を厳しく変える方向への検討ができないものでしょうか?
日本人として特に気になるのはソバへの残留です。小麦や大麦と違ってソバは加工度合が少ないため余計に残留しやすいと思われます。2017年段階、日本のソバの自給率は2割程度で、残りの8割は輸入です。中国が85%、アメリカが13%程度を占めています。
中国産も気になるところですが、中国のグリホサートの残留基準(56~57ページ)は、穀類については小麦に5ppmが最高で、そばに対する基準値は無いのでそういう使われ方はされていないと思われます。
明らかに問題なのはアメリカ産ソバです。アメリカ国内ではすでにソバへのグリホサートの残留基準は30ppmとなっています。アメリカのソバには収穫直前にグリホサートが散布されている可能性があるわけです。
そばへの農薬残留については、2017年には日本の玄蕎麦流通協議会という団体が、毎年農薬残留試験結果を公表していました。200種余りの農薬を調べていますが、残念ながらグリホサートは調べられていません。協議会事務局へも問い合わせてみたが、「確かにグリホサートは調べてない。収穫直前に撒くなどの使い方は聞いたことが無い」とのこと。
現在の国内基準値は0.2ppmなのでアメリカ産そばの中には違反しているものも見つかる可能性があります。しかし日本でも30ppmに緩和されてしまうと問題なしとなってしまいます。
2022年10月段階で調べてみたら、玄蕎麦流通協議会のデータを全国蕎麦(そば)製粉協同組合という所が、残留農薬の検査結果を発表していました。しかし相変わらずグリホサートは検査していないようです。ダメダメですね。
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